「療育」とは、治療教育のことです。
「療育」は障害のある子供に、施されます。とはいえ、持って生まれた障害は治療して治るのではなく、療育によって社会で生きやすくするのが狙いです。
療育というと、歩けない子が訓練するようなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、ソーシャルスキルトレーニングなど、発達障害があり社会性に課題がある子向けの療育や、自閉症スペクトラムの人向けのティーチと呼ばれるプログラムなど、いろいろな療育があります。
ダウン症や自閉症スペクトラム、ADHDやLDなど、障害のある子ども向けのプログラムには、音楽療法、リトミック、言語療法、感覚統合訓練、ティーチ、応用行動分析など、事業所ごとに特色があり、子どもの発達に合わせてプログラムが組まれます。
(「感覚統合ってなに?」「ティーチってなに?」「応用行動分析ってなに?」)
幼稚園でやっていることと同じような内容をやるのでも、視覚的にわかりやすいような掲示物やプリントの支援があり、先生からの指示も簡単でわかりやすく、教室の動線なども、障害のある子どもがスムーズに参加できるように工夫されています。そして何より、先生の配置が幼稚園などに比べると段違いに多いので、もしも可能なら、発達に心配のあるお子さんは「療育」に通わせてあげるのが一番いいと思います。
療育センターや児童精神科に併設されているリハビリセンターのような場所で受けるものもあれば、民間の発達支援事業所で受けられるセラピーや、放課後デイサービス(小学生以降)もあります。
ただ「療育」に通うためには、発達が遅れているという証明をとらなければいけません。発達検査や病院の診断で、「今この子には療育が必要とされている」と判断されなければ、事業所を紹介してもらえません。また国から補助が出ている「発達支援事業所」に通わせるには「受給者証」を申請しなければならず、それも1ヶ月ほどかかります。
また「療育」も1年間のプログラムが終了したら次がなかったり、また1年待機して順番を待たなければいけなかったりと、継続して続けられないこともあります。
そこで、周りに何とかついていける軽度の発達障害の子は、理解のある「習い事」で代用する手もあります。
→(「発達障害の子どもと習い事」)
「療育」と「習い事」の明確な違いは、やはり「療育」は障害のある子ども向けであるのに対し「習い事」はもっと広く一般に門戸が開かれていることだと思います。ただ最近は「発達障害の子どもに向けた指導」「発達障害が改善する」とうたっている塾や教室もあるので、徐々に民間の事業所でもニーズに対応した動きが出てきています。
ただ・・・民間は・・・お高いんですよね。
国の補助がある事業所は利用者負担が1割なのに対し、民間の習い事系は全額自己負担です。1コマ1万円近くする教室もけっこうあり、まあ扱いにくい子に先生がマンツーでみっちりついてくれるのだから普通の習い事に比べて高いのはしかたないとしても、ずっと続けるのは家計的にしんどいな~と感じます。
どこの家でも同じかもしれませんが、教育費って削りにくいけど、圧迫感ありますよね・・・
よく調べれば、同じような内容のサービスを公費で受けられる場合があるかもしれないので、自治体や発達障害支援団体などに問い合わせてみるのもおすすめです。
我が家では次男に「療育」を、長男に「習い事」をさせた経験から、どちらでも子どもにいい効果があるのは間違いないと思います。次男は3歳で「感覚統合訓練」を、長男は5歳で「体操教室」に通わせましたが、集中力が続かない、体の動かし方がうまくわからないような特性がある子は、体の使い方を教えてあげることで、集中力がついた、落ち着きが出てきた、体幹がしっかりしてきた、物にぶつからずに歩けるようになった(物との距離感がつかめるようになる)、などのいい効果があります。
とくに幼児期は、体の使い方を教えてあげることが重要だと思いました。
体操やスイミング、友だちと走り回って遊ぶことが、大切な時期です。
まずはその体の基礎ができてから、言葉が増えた、友だちと遊べるようになったという社会性がついてきます。いきなり言葉や文字を教えても、基礎ができていなければまったく意味がないのと同じように、遠回りに見えてもまずは基礎づくりをしっかりやることで、後にぐんと伸びていきます。これは学習面でも、同じだと思います。
上手にできなくても、他の子より習得に時間がかかっても、座って待てて先生の指示を聞いて動けるなら、普通の「習い事」でもやっていけます。
まだじっと座っていられない、指示を聞き取れないようなら、まずは「療育」でしっかりと基礎づくりをして、様子を見て「習い事」を併用する、移行させていくというのが現実的でしょうか。
また長男ゲンキのように、とにかく組み立てるのが大好きとか、図鑑を全部覚えちゃうとかオタク臭が強くて、なんか友だちとうまくいかない子も、プログラミング教室とかロボット教室のような場所だったら、似たような子と出会えて共鳴できるのかもしれません。小学校に入ると、得意不得意、好き嫌いがはっきりしてくるので、子どもがやりたいことをさせてあげたらいいと思います。
習い事にも、2種類あると思います。学習塾のような「現実の補完タイプ」と、ピアノやサッカーのように「一芸・未来への投資タイプ」。学習塾も、早期受験を目的としたような進学系は「未来への投資タイプ」に入るでしょうか。
「療育」はどうしても、社会への適合を目指しているので「補完タイプ」になります。子どもの困り感は確実に軽減するので、コミュニケーションで問題があったり、数字や文字が苦手な子などは、「療育」で適切な指導を受けさせてあげてほしいと思います。
反面、発達障害のある子に多いんですが、好きなことには異常に集中して、高い能力を発揮するタイプがいます。こだわりがいい方向にはまれば、才能開花することも。そういうタイプの子には、あえて高度な「一芸・未来への投資タイプ」の習い事で、興味をとことん満足させてあげる経験も、必要なのかもしれないと思います。
発達に凸凹がある子どもには、そんな「補完タイプ」と「投資タイプ」をうまく組み合わせて、その子の苦手と得意、特性や性格にあった環境を用意してあげれば、伸びていくことができます。
今、その子がどんなものを必要としていて、それには「療育」がいいのか、「習い事」がいいのか、家庭で親が教えてあげたほうがいいのか、外部の教室に通ったほうがいいのか、見極めて一番いい形にしてあげたいですね。