前回の記事で、応用行動分析学(ABA)についてご紹介しました。
(「応用行動分析学ってなに?」)
発達障害のある子供の、問題行動を減らすための療育として、効果が高いとされている応用行動分析学。もうちょっと詳しく、具体的な内容を説明してみたいと思います。
詳しく知りたい人は、こちらの記事もわかりやすくおすすめです。
(https://h-navi.jp/column/article/632)
自閉症スペクトラムなど、発達障害のある子供に限らず、小さな子供は誰しもわがままを言ったり、欲しいものがあるとひっくり返って泣いたりしてしまいますが、年齢が上がるとともに徐々に分別がつき、親が困る行動は減っていきます。BUT・・・発達障害のある子供は、分別や我慢する力がなかなか育たないんですね。大きい身体でひっくり返って泣かれると(しかも泣き止めない)、周りからの目線も辛いものがあります。
応用行動分析学とは、この問題行動の原因を分析し、適切に関わることで(前回の記事で紹介した強化と消去です)、望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らしていく理論のことです。
子供の問題行動の原因には、主に4つあります。
①欲しいものがある
問題行動の代表的な原因、「要求」です。おもちゃ、お菓子、それ以外にもいろいろな欲しいものを手に入れるための手段として、暴力や癇癪を起こしてしまう子供が多いです。大人が根負けして買ってあげるまで、泣きわめきます。この場合は、どれだけ暴れても、どれだけ泣いても、欲しいものは手に入らないとわからせる必要があります。その上で、「貸して」や「ちょうだい」と言えたらもらえる、泣かずに我慢できたらもらえるなど、正しい行動を教え、徹底させます。
②嫌なことから逃げる
発達障害のある子供は、触られるのを異常に嫌がったり、人ごみのざわざわする音を嫌がったりと、感覚が過敏なことがよくあります。普通の子は気にもしない接触が我慢できず、友達を叩いたり噛むことで、嫌なことから逃げようとしてしまいます。この「回避」が原因の場合は、極力嫌な刺激を排除することから始めましょう。(環境整備と言います)「噛んではいけない!」と叱るだけでは、なかなか止みません。嫌な刺激も我慢するよう強制し続けると、チックや自傷行動など他の問題行動を誘発してしまいます。
嫌がることはしない、嫌な場所には連れていかない、この子はこういう刺激に弱いと、周囲にも伝えてみましょう。「嫌な時は、ここに逃げたらいいんだよ」と、逃げ場所を教えてあげることも有効です。同時に感覚統合などの訓練で、感覚過敏を和らげていくのもおすすめです。
③注目を集めたい
この「注目要求」も、原因として非常に多いです。我が家でも次男ミッキーは、かまってほしいがために、ありとあらゆる大人の嫌がることをします。叱られることが、おもしろいんですね。この場合は叱っても逆効果なので、一番いいのは無視することです。でも、なかなかそうも言っていられません。子供も賢いので、どうすれば親が怒るかよく知った上でやるので、ついキレてしまいます。
今うちでやっているのが、かまってもらうための別の手段を教える(肩をトントンしてくれたらママうれしいわ~とか「あそぼ」って言おうねとか)ことと、できるだけかまってあげることです。一対一でたっぷりかまってもらえて満たされていると、悪さはしないんですよ。暴れたり叫んだら遊んでもらえない→相手も喜ぶことをしたら遊んでもらえると、どうか理解してほしい。
④そうすることが気持ちいい
自閉症スペクトラムの子に多い常同行動が代表ですが、手をひらひらさせたり頭を壁にぶつけることで、足りない刺激を得ようとする、感覚の過敏さや鈍麻さが原因の「自動強化」の場合は、やめさせるのがけっこう難しいです。小さな男の子がおちんちんをいじるのも、同じです。
気持ちいい、楽しいことは、なかなかやめられません。根気強く対応することが求められます。どんな刺激が欲しくてやっているのかを見極め、代替物を用意する(ぴょんぴょんするならトランポリンを跳ばせる)(鉛筆を噛む代わりにねり消しをにぎにぎさせる)ことが、おすすめです。無理にやめさせても、違う形で悪癖が続くだけのことが多いので、気をつけましょう。我が家でも、噛み癖が直らない長男ゲンキのために、ガムやにぎにぎグッズを用意しています。
ストレスや強い感情が原因のチックや自傷行動、パニックに関しては、禁止するのではなく、できるだけ起こさせないことが大切になってきます。問題行動というよりは、限界を超えてしまった子供が自分を守るためにやっている行動なので、そこまでいかないように、守ってあげてほしいと思います。見ているだけで、親もつらいですしね。子供にも、相当な負担がかかっているはずです。
また自閉症スペクトラムの子供たちは、自由時間に何をしていいのかがわからず、不安になったり問題行動を起こしてしまうことも多いです。暇な時間を持て余さないよう、やることを具体的に指示する、いくつかの選択肢からやりたいことを選ばせる(散歩 or テレビ or 絵本など)、待ち時間を具体的に教える(タイマーや時計)などの対応で、「静かにしていると思っていたら、とんでもないいたずらをしていた」悲劇を防ぐことができます。(←これ、我が家でも頻発)
とにかく、毎日めちゃくちゃなことばかりされてもう限界!と困っている方へ、少しでも参考になればと思います。