クレーン現象

クレーン現象ってなに?

まだ言葉がうまく使いこなせない1~3歳児が、大人の手をひっぱって、自分の手の代わりに何かをして欲しいと要求することを「クレーン現象」と呼びます。
言葉によるコミュニケーションが苦手な自閉症児によく見られることから、早期に自閉症を発見するための判断材料とされています。
→(「赤ちゃんの頃の自閉症児の特徴とは?気になる子供の様子」)

ですが、クレーン現象=自閉症ではないので、子供が頻繁にクレーン現象をしているからといって心配しすぎることはありません。まだうまく話せない小さな子供が、クレーン現象で要求を伝えてくることはよくあります。クレーン現象以外にも、目が合いにくい、指差しをしないなどの特徴がないかどうか、注意深く観察することが大事です。

我が家の次男ミッキーも、2歳頃までクレーン現象をしていました。

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その頃の彼はすべての表現を「んっ」で済ませていたので、「んっ」+指差しやクレーンで要求を伝えている感じでした。そう、でも指差しはできていたんですよ。目も合っていたし。だから自閉症とはまったく疑っていなかったんですね。

3歳前頃から徐々に単語が出始めて、クレーン現象も治まっていったんですが(自分で何でもやるようになった)、療育に通い出して3ヶ月ほどは、デイの先生の手をずっと握って、クレーンでないと行動しなかったそうです。環境の変化で、不安もあったのだと思います。BUT、その時期家庭では、クレーン現象はまったく見られませんでした。人を見て、行動ができているということですね。療育先に慣れるにしたがって、クレーンも治まっていったそうです。

三男ユウキは、現在1歳10ヵ月。言葉はすごい勢いで伸びていて(もう3語文で喋っています)、ミッキー抜かされちゃうんじゃないの・・・という感じですが、絵本を読んで欲しいとかテレビをつけてほしいとか、自分一人でできない時に私の手を引っ張っていきます。

ミッキーは自閉症スペクトラムで、ユウキはおそらく定型発達児ですが、二人ともクレーン現象は見られました。長男ゲンキは、すいません、覚えていません。たぶん、やっていなかったと思います。一人目で手が足りていたので、私が先回りしてやってあげていたかもしれません。下の子たちは、自己主張しないと私の気を引けないという面はあります。

自閉症児のクレーン現象は、おそらく少しちがうニュアンスではないかと思います。

言葉でうまく言えない、自分一人では届かない&できない場面で起こるクレーン現象は、小さな子供にはよくあることです。しかし自閉症児のクレーン現象は、目の前にあるジュースを取ってほしいとか、クレヨンで絵を描いてほしいとか、わざわざ大人の手を借りなくても自分でやったほうが早いんじゃないの??という場面で起こりがちです。これは、言葉のコミュニケーションができない以外にも、身体の感覚が普通とはちがうことから起こってくる現象ではないかと言われています。

自閉症の人は感覚が異なっていて、自分の身体が思うように動かせないことがあるそうです。「自閉症の僕が跳びはねる理由」の作者、東田直樹さんは「壊れたロボットを操縦している感じ」と書いています。

目の前にあるジュースやクレヨンに、どれだけ手を伸ばせば届くのかがわからない。この違和感がクレーン現象にプラスされているのが、自閉症児の特徴なのだと思います。

それでも、クレーン現象も立派な要求です。違和感を持っても、どんどん答えてあげるのが正解なのだと思います。要求に必ず答えてもらえるという安心感が、その後のコミュニケーションにもつながるのではないでしょうか。

診断&障害名は必要?診断を受けることの意味

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子供の発達に不安を持っていても、相談→診断を受けることのハードルがあります。
どこに相談に行けばいいのかわからないという人もいれば、診断を受けることで障害がはっきりしてしまう・・・と認めたくない人まで、さまざまな事情や感情があるのではないでしょうか。

→(「療育手帳の取得にむけて」)

そこで診断を受けることの意味について、考えてみたいと思います。

我が家の次男ミッキーには、言葉の遅れがあります。それ以外にも多動や感覚過敏といった症状があり、乳幼児期から私は「ADHDかもしれない」と思っていました。しかし言葉に関しては、これまで全く喋らなかった子が3歳を過ぎていきなりべらべら喋り始めるとか、個人差が大きいとか、いろいろな話があるのであまり心配していませんでした。

手をひらひらさせたり逆さバイバイをしたり、オウム返しをしたりといった、自閉症児特有の行動がもし見られていたら、もっと不安になったと思います。が、ミッキーはそれがなかった。しいていえば、クレーン現象をしていた時期が少しあったかな~という程度で、自閉症を疑う症状は乳幼児期にありませんでした。

→(「クレーン現象ってなに?」)

それでも、3歳を前にしてやはり家で育てることの限界を感じ、市の家庭センターに相談に行きました。そしてそこでは、言葉の遅れを一番重視されたのです。多動に関しては、まだ小さいからこれから落ち着いていくかもしれないという感じで、今現在、一番困っているのは多動なんだよ!といくら訴えても、「様子を見ましょう」。でも言葉の遅れに関してはすごく心配されて、療育を勧められたのです。

ミッキーは5歳で、「自閉症スペクトラム」と診断されました。

我が家の長男ゲンキは、それこそこだわりの塊のような人で、言葉の遅れこそなかったものの幼少時から空気が読めない困ったくんでした。考え事をしていると呼ばれても気づかないし、ピョンピョン飛んだり、一人遊びもひたすらものを組み立てているだけでごっこ遊びはほとんどしないなど、ゲンキが自閉症だと言われたら私はすごく納得できます。

が、ゲンキは小学校も普通級でがんばっており、まだギリギリ個性の範囲内でおさまっている感じです。これから先、彼の特性がどう出て、友達や学校生活の中でどうなっていくのか未知数ではありますが、自閉的傾向ありというグレーゾーンのままでやっていけるかもしれないと思います。

反面、ADHDについて調べているとゲンキは不注意タイプじゃないかな・・・忘れ物失くし物が多い、目の前にあるものを見つけられない、注意力散漫、好きな物には異常に熱中する(過集中)、話を聞いていないなどが、学校生活にも影響を及ぼしています。まだ私が最終チェックすることで忘れ物失くし物はある程度防げていますが、それでも大きくなるにつれ親のチェックを嫌がりだしたら、どうなるかなと心配しています。

ゲンキが診断を受けるとしたら、おそらく「ADHD」または「ADD」がつくのではないかと思います。

難しいですよね。

実際に子供を見た感じでは、ミッキーがADHD。ゲンキが自閉症スペクトラムなんですが、障害名は真逆なんです。

それはつまり、診断や障害名は、実際の生活でのやっていけてなさについてつくからなのだと思います。大人になってからアスペルガー症候群だと診断されて、これまでの生きにくさがようやくわかったという人がいますが、要するに「会社でどうしてもうまくやっていけない」「転職をくり返している」という現実に対して、それは発達障害が原因ですよという診断がつくのであって、逆に同じ人でも別の職業でうまくはまってやっていけていたら、障害名はつかないということになります。

子供や周りの大人が困っていなければ、診断を受ける必要はないのでしょう。

でももし本人が困っているのであれば、診断を受けて適切な支援や療育を受けることで、ずっと生きやすい未来を用意してあげられます。とくに自閉症の子供には、確立された治療法は現在ありません。教育のみが、彼らの障害を和らげてくれます。そう考えると、グレーゾーンと言われるあいまいな子供たちこそ、診断をきちんと受けて自分の特性や苦手なことを知る必要があるのかもしれないと思います。

普通の人がなんとなくわかることが、発達障害が原因でよくわからない。
でも「どうしてできないの」「どうしてわからないの」と言われ続ける。

やっぱりできない。自分はダメな人間なんだと思い込んでしまう。→不登校やひきこもり、うつ病を発症する。これを二次障害といいます。

発達障害のある子どもを育てる上で、一番気を付けなければいけないのが自己肯定感を育てる&二次障害を防ぐことです。本人も周りも、なぜできないのか、どうすればできるようになるのかを知ることで、ずっと生きやすくなります。そのために、診断が必要になってくるのだと思います。

もっと手軽に気軽に発達に関して相談ができて、「障害」というはっきりした形でなくても、子供の苦手な部分とそれにどう関わっていけばいいのかが、わかりやすい社会になればいいですね (o^―^o)

赤ちゃんの頃の自閉症児の特徴とは?気になる子供の様子

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自閉症はやはり言葉の遅れがはっきりしてくる2、3歳頃にわかることが多いですが、赤ちゃんの頃から特徴的なサインが出ていることもあります。

赤ちゃんの頃の自閉症児の特徴として、

①目が合わない。
②表情がない。
③抱かれると嫌がる。または抱かれても身体を硬くして緊張している。
④呼ばれても反応しない(耳が聞こえていないと誤解されることも)。
⑤母親と気持ちが通い合っている感じがしない。
⑥人見知り、後追いをしない。
⑦模倣(マネ)をしない。バイバイが逆になる。
⑧指差しをしない。
⑨ごっこ遊びをしない。物を並べるのが大好き。
⑩手をひらひらさせる、くるくる回るなどの常同行動をくり返す。
⑪洗髪や歯磨きを、異常に嫌がる。
⑫カミナリや花火など、特定の音を異常に怖がる。
⑭同じものばかり食べる。好き嫌いが激しい。
⑮夜泣きがひどい。または、夜に寝ない。
⑯つねに動き回っていて、落ち着きがない。
⑰順番や手順にこだわりがあり、少し違うだけでパニックを起こす。
⑱人の手を使って、物を取ろうとする。(クレーン現象)


などが挙げられます。幼いうちからこういった違和感を感じていて、2歳を過ぎても喋らないといった言葉の遅れがプラスされると、わりと早い段階で自閉症という診断がつきます。(早ければ1歳半健診で指摘されます)

とくに①や②や⑦や⑧は、わりとわかりやすいサインだと思います。1歳半健診でも、目が合うか、指差しをするかを見られます。
⑨や⑩も、典型的な特徴です。ミニカーやブロックをひたすら並べている、ピョンピョン跳んでいるというのは、幼児期の自閉症児によく見られます。

ですが⑪や⑭や⑮などは普通の子でもよくある話で、お子さんに当てはまるからといっても他に明らかに気になるところがなければ、心配いらないでしょう。おそらく、程度の問題だと思います。自閉症児のこだわりは普通の子のこだわりとは違って、生活が成り立たないレベル。例えば、散歩のたびに必ず公園の横にある看板をタッチしないと通れなくて、その看板がある日撤去されるとパニックを起こす。など親には理解しがたい細かいこだわりで、毎日ががんじがらめになってしまいます。
パニックも、泣き始めたら1時間ギャン泣き大暴れという状態をいいます。ひっくり返ってエンエン泣いても、5分もしたら治まるものは癇癪にすぎません。

自閉症スペクトラムは、まだわかっていない部分の多い発達障害ですが、子供の約50人に1人、グレーゾーンの子も含めれば約20人に1人はいることが研究でわかってきました。けっこう、多いんですね。クラスに1人はいるということです。男の子に圧倒的に多く、女の子の約5倍の確立で発生すると言われています。

次男ミッキーは、上にあるような特徴は見られませんでした。人見知りはあまりしなかったけれど、後追いはしていたし、表情が乏しかった気はするけど(いつもシラ~としていた)、目も合うし笑顔も多く、バイバイやタッチなど模倣もちゃんとできていました。指差しもありました。どちらかというと、じっとしていられない、破壊的な遊びを好むなど、ADHDの要素が乳幼児期から激しく、とにかく多動を何とかして~という感じでした。

だから言葉の遅れを指摘されても、う~ん、自閉症とは違うんじゃないかな~と思っていたわけです。でも洗髪や歯磨きはめちゃくちゃ嫌がっていたし、聴覚過敏で花火の音は今でも怖がります。味覚過敏もあり、混ざった味が食べられず、炊き込みご飯やチャーハンは食べません。白いご飯じゃないと嫌。ハンバーグも嫌い。

これらは感覚過敏と呼ばれる症状で、普通の人は気にならないレベルの感触や音や味が、自閉症の人は耐えがたいほど強く感じられることです。ミッキーには、これがあるな~と感じます。

慣れや訓練でも何とかなるもので、洗髪や歯磨きは、10秒数えようとか、好きな歌を歌ってあげるから我慢しようという声かけで、3歳半頃にはなんとかできるようになりました。白いご飯へのこだわりはわりと面倒で、ゲンキユウキは混ぜご飯系が大好きなので、炊き込みご飯やチャーハンもたまに作りますが、その日はミッキー用に白飯を別で用意します。
花火やカミナリも、来そうな時は事前に予告することで、かなり苦手さが軽減できつつあります。

感覚過敏は、どれだけ辛いのかが本人以外にはわかりにくい障害です。根性論で「これくらい慣れろ!」と強要するよりは、どうすれば大丈夫になるかな?と一緒に工夫をしてあげるほうが、うまくいくと思います。

profile

筆者:nontan
男の子3人を育てています。
長男ゲンキ(2009年生)
こだわりの強いグレーゾーンBOY
+アトピー&卵アレルギー

次男ミッキー(2012年生)
ASD+ADHDのハイブリッドBOY
+ぜんそく&卵エビカニアレルギー

三男ユウキ(2015年生)
今のところ普通に見えるけれど…アレルギーなし

出産前は書店勤務&JPIC読書アドバイザーとして活動していました。子育てが一段落したら、読み聞かせ活動を再開したいです!
はじめての方は、こちらの記事をまずお読みください。

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