感覚統合

触覚が未発達だと起こる、感覚過敏

発達障害の子供は、感覚や発達に偏りがあることが多く、そのアンバランスさが問題行動につながっています。弱い部分を伸ばし、全体のバランスをよくすることで、できることが増え、困ったことが減っていきます。

自覚しにくい固有覚前庭覚について、前の記事に書きました。
それ以外にも、発達障害があると偏りがちな感覚に、触覚があります。

触覚とは、触って感じる感覚です。

手先、指先、皮膚、身体のいろいろな部分で感じることができます。感覚統合訓練で説明されたのですが、この触覚には「原始系」と「識別系」の2つの働きがあり、その2つのバランスがとれていないと感覚過敏や感覚鈍麻、より強い刺激を求める常同行動などにつながってしまいます。

(「感覚過敏ってなに?」)(「感覚鈍麻ってなに?」)(「常同行動、常同運動ってなに?」)

img121

原始系」の触覚とは、熱い!痛い!など、危険から身を守るために本能的に備わっている、反射的&防衛的な感覚です。軽い刺激でも身体が反応し、身を守ります。

対して「識別系」の触覚とは、ものを探したり、どんなものかを触って確かめるための感覚です。ある一定以上の強さの刺激で、感じることができます。目で見なくても、触るだけでわかるためには「識別系」の触覚が発達する必要があります。

次男のミッキーは感覚過敏があり、とくに顔周りを触られるのを嫌がります。小さい子はみんなそうかもしれませんが、「鼻ふいて~」「頭ふいて~」「何かついてる~」のたびに、大暴れです。

img120

 これは識別系の触覚が未発達で、原始系が勝ってしまっているせいなんだそうです。識別系が育っていれば、「鼻をふくだけだから痛くない」「ママがふいてくれるから嫌じゃない」「鼻が垂れたままだと気持ち悪い」とか、いろいろなことを認識して、「触られたら嫌」という原始系の反応を抑え込みます。識別系が育っていないせいで、「とにかく触れるのは嫌!」と逃げたり攻撃したり、過剰に防衛反応が出てしまいます。

他にも識別系が未発達だと、身の回りのあらゆるものを触りたがったり、同じ毛布など特定の刺激に執着したり、という行動をとります。赤ちゃんはみんなそうですね。

生まれたばかりの頃は、原始系の触覚しかありませんが、成長するにしたがって徐々に識別系の触覚が発達し、本能的な反応をする前に、識別系によって危険性を判断することができるようになります。ここが、発達障害の子供は育ちにくいんですね。

識別系の触覚を育てるには、箱の中などに見えないようにおもちゃを入れて「これ、な~んだ?」と当てっこ遊びをするといいそうです。感覚過敏を和らげるには、いろいろな感触のものを触らせたり、くすぐりっこやベビーマッサージ、ボールの当てっこなどがおすすめ。遊びを通して、触られても嫌じゃない、楽しい触り方があるというのをわかってもらえるといいですね!

固有覚ってなに?

人間の感覚には、聴覚や視覚、触覚、嗅覚、味覚などがあります。その他に、あまり知られておらず自覚しにくい感覚に、固有覚前庭覚があります。発達障害のある子供は、この固有覚と前庭覚が未発達のことが多く、いろいろな困った行動につながっています。今回は、固有覚についてご紹介します。

前庭覚に興味のある方は、こちらもどうぞ。→(「前庭覚ってなに?」)

固有覚と、身体の位置や動きを感じる感覚です。

img124

筋肉や関節の動きから感じられる固有覚は、思い通りに身体を動かしたり、ボールを投げる強さを調整するための感覚です。固有覚がしっかりと働くことで、身体の動きや力加減をコントロールすることができます。

固有覚が未発達だと、走ったり跳んだりする時に身体がスムーズに動かず、動きがぎこちなかったり、動作が乱暴だったり、手先が不器用だったりします。また身体の位置をうまく認識できないので、姿勢が崩れやすい、前回りなどのダイナミックに身体を動かすことを怖がったりしがちです。

img118

長男ゲンキは、ここが弱いように感じます。

姿勢が異常に悪く、常に横向きや変な姿勢をとっています。「それ、気持ち悪くないの?」と私なんかは見ているだけで違和感をもちますが、本人は気づいてすらいません。注意しても、身体をまっすぐにできません。

お手本の動きを真似したり、頭の中でイメージした動きをやることも苦手で、ブランコはまだこげないし、跳び箱などで思いっきり跳ぶこともできません。「怖い」と気持ちの上のストップもあると思いますが、何をどうすればそんな風にできるのかがわからない・・・という感じです。くり返しくり返し動きを身体に叩き込んで、ようやくできるようになったと思っても、しばらく間が空くとまたできなくなってしまいがちです。鉄棒やブランコは、公園で見かけるたびに「やってみ」と促すようにしています。

固有覚を鍛えるには、ぶら下がったり押したり引いたり、身体の力を入れながら動くことをさせます。
綱引き、トランポリン、空中ブランコや鉄棒にぶら下がる、重たいものを持つ、ジャングルジムやはしごに上る、などがおすすめの動きです。ボールを思った通りの場所に投げたり、マット運動も固有覚を鍛えることができます。

IMG_0400

感覚統合訓練は、子供が楽しんでやれることが一番大切です。
訓練の内容が、難しすぎたり簡単すぎては楽しめません。また、強要してもいけません。子供がやりたいと思える内容を、うまく工夫してやらせましょう。楽しく遊んでいたら、できることが増えた!というのが理想です。

前庭覚ってなに?

発達障害の子供は、普段自覚しにくい前庭覚固有覚という感覚が未発達のことが多く、その発達の凸凹さが問題行動につながっています。

前回の記事では、固有覚について書きました。(「固有覚ってなに?」)今回は、前庭覚についてご紹介します。

前庭覚とは、平衡感覚とも呼ばれ、身体のバランスをとるための感覚です。

img125

私たちは立って歩くだけでも、無意識のうちに前庭覚を使ってバランスをとりながら生活しています。引力を感じて、空間の中での自分の身体の位置を知るための感覚が、前庭覚です。

身体の傾きや回転を感じる前庭覚が未発達だと、まっすぐに立ったり座ることが苦手で、姿勢が崩れやすかったり、座り続けることが困難で、すぐに立ち歩いてしまったりします。落ち着きなくつねに動き回ってしまう多動も、前庭覚が鈍いため、より強い刺激を求めてしまうせいです。

高いところやバランスの悪いところを異常に怖がったり(重力不安)、動いているものを目で追うことが苦手で、黒板に注視できなかったり、集中を持続できないなどの問題が出てきます。

img119

 次男ミッキーは、ここが弱いですね。
多動だし、高いところも揺れる遊具もとても怖がります。すべり台はOKなんですが、ハンモックやブランコは、感覚統合訓練を根気強く続けて、ようやく最近、すこし乗れるようになりました。

前庭覚を鍛えるには、すべり台やブランコ、平均台、スクーターや自転車などのスピードが出る乗り物、空中ブランコやタイヤブランコの回転などが、おすすめです。揺れるブランコにしがみつくことで、固有覚も一緒に刺激することができます。ブランコも上手に乗れるようになってきたら、押す速さを変えたり、突然止めたり、左右アンバランスに揺らしたりと、様々な不規則な動きを入れるといいそうです。

IMG_0411

授業中に椅子にきちんと座り、先生の話を聞いて、黒板の文字を読む。

これだけをこなすために、本当に様々な感覚が使われています。

じっと座っていられない、さされた文字を読めない、突然キレてしまうなど、子供の問題行動には必ず理由があります。前庭覚や固有覚、触覚などの感覚がアンバランスなせいでこれらの問題行動が起きているなら、感覚統合訓練が有効です。家庭でできる訓練も、たくさんあります。

やみくもに叱るのではなく、なぜできないのか、なぜこんなことをしてしまうのか、を一緒に考えて生きていけたらいいなと思います。

感覚統合ってなに?


言葉に遅れのある自閉スペクトラム症や、落ち着きがなく動き回ってしまうADHDの子供に対して、有効な療育方法に感覚統合訓練があります。我が家の次男ミッキーも、市の総合療育センターで受けています。
→(「ミッキー~4歳 幼稚園へ向けて療育のスタート」)

自治体の療育センターや、児童精神科などの病院、リハビリセンターなどで実施されているかと思いますので、興味がありましたらぜひお問い合わせください。

私たちは、生活の中で様々な感覚を使って暮らしています。

朝日をまぶしいと感じて目覚め、のどが渇いたと水を飲み、トイレに行き、ねまきのままじゃ寒いなと着替えて、お腹が空いたなと朝ごはんを食べます。それ以外にも、時計を見てそろそろ家を出る時間だから急がなくっちゃとか、空を見て今日は雨が降りそうだから傘を持っていこうとか、いろいろな刺激を自分の中で整理して、有効な情報と要らない情報に分け、さらに経験からそれに備えて生きています。

発達障害があると、この感覚を適切に感じられなかったり、情報を整理できないせいで、生活の様々なことがうまくできません。光を痛みと感じて泣き出してしまったり、逆に執着して手をひらひらさせてずっと光を見ていたり、また排泄感覚がわからずおもらしをしてしまったり、暑さ寒さがわからなかったり、毎日同じ服でないと着れなかったり、同じものしか食べられなかったり、これらの困った行動は、ほとんどが感覚をうまく使えていないことから来ています。

そのアンバランスで未発達な感覚を育てることで、全体の能力をバランスよく伸ばしていくための訓練を、感覚統合と呼びます。ボールプールに入ったり、ブランコやハンモックで揺らしたり、トランポリンを跳んだり、ジャングルジムや平均台、はしご上りなど、様々な感覚統合訓練があります。

言葉に遅れがあって療育を受けることになっても、言語訓練ではなく、まずは感覚統合訓練をすすめられることが多いです。回り道に見えても、実はそのほうが近道なのです。

img123

訓練を受ける前に、りんごの木を例に説明を受けました。感覚の木です。

根っこの部分、第一段階はおよそ2歳頃までに発達します。
視覚や聴覚、触覚、前庭覚や固有覚が基本になります。筋肉の使い方、姿勢をうまく保つバランス感覚、また抱っこされると気持ちいいなどの快不快を感じるのが、この段階です。

木の幹の部分、第二段階はおよそ4歳頃までに発達します。
自分の体を使って、いろいろな動きをすることができるようになります。高いところに上ったり下りたり、先生の動きを真似したり、活動の幅がぐんと広がる時期です。

さらに枝の部分、第三段階はおよそ6歳頃です。
目と手を協調させて動かしたり、自ら目的をもって行動したり、形や音で区別できるようになったり、そして言葉はようやくこのあたりで完成します。

第一段階、第二段階、第三段階がうまく伸びることで、やっとりんごの実がなります。りんごの実は、授業を集中して聞く力だったり、考えたことをまとめる力だったり、抽象的な絵を描く能力だったり、友達のことを気遣う優しさだったりします。学校生活でつまづいている子供も、これまでの発達で弱い部分がないか、例えばバランス感覚が悪くて平均台が歩けないなどの問題があれば、そこにアプローチすることで、なぜか情緒面も安定してくることがわかっています。不思議ですよね~ 

自閉症スペクトラムやADHD、広汎性発達障害など、様々な発達障害がありますが、全てに共通する特徴として、この発達の凸凹さがあります。ミッキーも、言葉はうまく使いこなせないけれど、数字は強いし、パズルや型はめなどの形の認識も強いです。特性と言えば特性なんですが、そのアンバランスさゆえに生きづらさを抱えています。

逆に知能や言語に遅れがあっても、全体がバランスよく遅れている場合は、その子なりのスピードでゆっくりとでも伸びていくようです。ようは、バランスなんですね。やはり特別に弱い部分があると、パニックやこだわりなどの問題行動につながってしまいます。

長男のゲンキも、知的にはとても早熟で記憶力も抜群にいいのですが、体幹が弱く運動面はなかなかついていけていません。弱い部分、ありまくりです。今からでも、感覚統合訓練を受けさせたいと強く思います。ミッキーで勉強したことを、ゲンキにも応用して普段の生活に上手に取り入れていきたいです!


家庭でもできる、感覚統合の遊びについて紹介してある本です。私も参考にしました。どれも特別な動きではなく、普通の遊びの中でできることばかりです。ちょっと意識的に、取り入れてあげるだけでもずいぶん変わってくると思います。

感覚については、他にもまとめた記事がありますので、興味がありましたらどうぞ。
→(「固有覚ってなに?」「前庭覚ってなに?」「触覚が未発達だと起こる、感覚過敏」)

感覚過敏をやわらげる訓練


言葉に遅れがあり、発達障害のある次男ミッキー

4歳から、2年保育で幼稚園に行くことになりました。が、一日入園で荒れる荒れる・・・

ミッキーはこだわりはないのですが、感覚過敏があります。(「感覚過敏ってなに?」)

見えないところから急に触られたり、自分のテリトリー内にあるものを触られることも、極端に嫌がります。身体接触は、基本的に嫌いです。狭いところで密着して過ごすこともストレスで、兄弟でも、一日中部屋の中で一緒に過ごしているとキレます。人混みのうるさい音も苦手。

一日入園では、たくさん子供がひしめき合っている教室を見ただけで「うわっ」となってしまい、入れなかったのは当然なのですが、最後に隅っこにでもいられたのは成長ですね。がんばっていました。

しかし私にぴったりと貼りついて、少しでも離れようものならしがみついてくる状態。私と一緒ならまだがんばれるけど、知らない人ばかりだと無理でしょうね。最初はやっぱり、付きそいかなぁ。でも、昨日はチックが出なかった!手は一度だけ噛んでしまいましたが(自傷行動)、先月までに比べると、荒れ方がやや収まってきた感じです。

入園前に苦戦していることを相談し、ミッキーも長男ゲンキがお世話になっている「ことばの教室」に通うことになりました。
「さ行が言えない」ゲンキの発音訓練 ことばの教室

ことばの教室は、ゲンキのように構音障害(発音がおかしい)や、言葉の遅れ、どもりなどの言葉の問題に加えて、難聴などの聞こえ方の問題や、発達障害、グレーゾーンの子供まで、幅広く支援してくれる通級教室です。幼稚園のすぐ近くにあり、通いやすいので本当に助かります。

ミッキーはすでにデイサービスで療育を受けているので、ことばの教室では療育よりも入園後の生活難を和らげるための訓練を行っていくことになりました。

おそらく、感覚過敏が一番ネックになるだろうと思います。まずは、音。そして身体接触ですね。

お友達と廊下ですれちがって、かすかに腕が当たっただけでも、ミッキーはキレてしまいます。相手に悪気があるかどうかは、関係ないし理解できません。相手が気付かないほどのかすかな刺激に、ミッキーが過剰に反応して、やり返したりパニックを起こしてしまうのではないかと心配しています。教室に入れない、活動に参加できない、というのはある程度仕方ないし、安全さえ確保されているのなら、一人で自由に遊んだっていいと思います。やりたいな~と自然に思ってくれて、少しずつミッキーのペースで参加できればOKです。

感覚過敏をできるだけ和らげて、友達との衝突を避ける。
つらい刺激をできるだけ減らして、幼稚園を楽しい場所だと思ってもらえる。

この2点を重点的にサポートしていくことになりました。そのために、おすすめされた感覚統合訓練をご紹介します。家庭でもできるので、お子さんが同じように感覚過敏で困っている方は、ぜひお試しください。

img075

まずは、できるだけ接触に慣れることから。
必ず見える場所から、柔らかいボールなど痛くないものを、わざとぶつけます。最初は「ギャーギャー」騒いでいたのですが、だんだん遊びなんだとわかってきて、キレずに笑って過ごせるようになってきました。

これまで嫌がることは極力しないようにしてきたのですが、「遊びの中で慣れさせる」ことも大切なのですね。本人が嫌がる手前で、「楽しいじゃん」と思えるようになることが重要です。

img076

また身体が固い、要らない部分に力が入っていることから、常に緊張状態が続いてしまい、疲れやすい&感覚が過敏になってしまうそうです。

それを和らげるためには、脱力させる練習をするといいそうです。バランスボールの上にのっける。ブランコやハンモックで揺らす。トランポリンを飛ぶ。またはトランポリンに寝かせて、すぐ横で飛んであげる。などなど。

家庭で簡単にできるのは、大きめのバスタオルに乗せて両端を持って揺らすこと。これはみんな大好きで、ミッキーにやっていると「やってやって」と3人が大変なことになるので、なかなか週末や大人の手がある時しかやってあげられません。

ミッキー
にいいことは、ゲンキにもユウキにもいいはずです。もっともっとしてあげたい!身体が5つくらい欲しいです \(^_^)/

profile

筆者:nontan
男の子3人を育てています。
長男ゲンキ(2009年生)
こだわりの強いグレーゾーンBOY
+アトピー&卵アレルギー

次男ミッキー(2012年生)
ASD+ADHDのハイブリッドBOY
+ぜんそく&卵エビカニアレルギー

三男ユウキ(2015年生)
今のところ普通に見えるけれど…アレルギーなし

出産前は書店勤務&JPIC読書アドバイザーとして活動していました。子育てが一段落したら、読み聞かせ活動を再開したいです!
はじめての方は、こちらの記事をまずお読みください。

にほんブログ村 子育てブログ 発達障がい児育児へ
にほんブログ村
↑参加しています。よければ応援お願いします。