1~3歳頃までは、まだ言葉によるコミュニケーションが未熟なため、口より先に手が出てしまうことはよくあります。一般的には、言語が伸び気持ちを言葉で伝えられるようになってくると、収まっていきます。我慢する力、周囲を見る力などは、成長とともに備わっていくものなので、まだ小さい幼児期は「しかたない」「お互いさま」と社会的に大目に見てもらえる時期でもあります。

ですが、やはり幼児期から「おっとりしたおとなしい子」と「神経質で手が出やすい子」は分かれます。育て方のせいかしら・・・と悩みますが、子供の性格もあるし、感覚が過敏だったり、発達に凸凹があったりと、本人自身も困っている特性が関係している可能性もあるので、いたずらに厳しく躾ければ他害が直るとも限りません。

1~3歳頃、次男のミッキーはとにかくじっとしていられない多動・衝動性が目立ちました。興味があるものにすぐに手を伸ばすので、とにかく家中の危険なものを隠しましたが、それでも想定外のものを壊されるという日々でした。本人は触って見たいだけなんですが、力の加減ができないので倒して壊したり、落として壊したり、今思えば、体の使い方が下手だったせいもあると思います。

善悪の区別は・・・まったくついていませんでしたね。とにかく好奇心の塊で、気になるものに突進しては、すぐ次の気になるものが見えて(この間30秒くらい)、いわゆる「手当たりしだい」です。おもちゃでも遊べず(遊び方がわからず)、ひたすらおもちゃ箱から出す、投げるということをくり返していました。

img026

児童館などに連れて行っても、気になるものがあると突進してしまうので、他の子にぶつかったり、押し倒してしまったり、おもちゃを無理やり取ってしまったり、危なくて目が離せませんでした。またこの頃は、まだ言葉が出ず「キエー」「キャー」と奇声を発していたので・・・ちょっと遊び場的なところには行きにくかったですね。

療育に通いだして、ようやくおもちゃの遊び方がわかり、集中して遊べるようになって、言葉もぐんと伸びました。音や刺激に弱く、人混みが苦手なのだとわかり、人の少ない時間帯に利用するなど、連れて行く場所やタイミングを選ぶようにして、かなり楽になりました。

まだ外の刺激に触れ始めたばかりの幼児期は、他害行動も「反射」のようなものが多く、嫌な刺激に攻撃的になったり、気になる物が目に入った瞬間に取りに行ったり、周りの反応が面白くてやってしまったり、しがちです。

この時期は、いくら言い聞かせても子供が内容を理解できていないことも多いですが、根気よく「これをしたからこうなった」「これはこうこうだからいけない」と順を追って言い聞かせ続けるしかありません。言葉による表現力やコミュニケーション能力が上がってくると、落ち着いていく子も多いので、子供のペースに合わせて関わってあげればいいと思います。

子供本人は意味もわからずやっていることも多いので、親が備えるしかありません。

img027
img028

近づくと、メガネをすぐに取られる時期もありました。取られた瞬間に投げて壊されるので、必死でよけていましたね。反射神経が、求められる子育てでした。

おもちゃを取りそうになったらすかさず止めて、「かして、だね」と手を添えて一緒に言わせる。手が出そうになったら抑えて、「どうしたの?」と気持ちや理由を聞いてあげる。危ないものは、片付けておく。飛び出さないように、道路や歩道では必ず手をつなぐなど、周囲が気をつけてあげなければなりません。嫌な音や人混みなど、他害を誘発するような刺激があれば、できるだけその刺激からは遠ざけてあげてください。

他害などの問題行動を修正するためには、スモールステップで関わりましょうと療育で言われました。子供がちょっとがんばればできそうなステップから始め、少しずつ階段を上らせていくのです。

始めは親が体で止めてでも、「手が出なかった経験」を積ませ、「代わりに口で伝える経験」を蓄積させていくしかありません。まずは家庭で、親と一緒におもちゃの貸し借りなどを練習してから、児童館などに行くといいと思います。

スモールステップは、子供ができそうなことから始めるのが大切です。いきなり、「友達と遊べるようになる」などの大きすぎる目標を立ててしまうと、できないからと親子で傷ついてしまいます。「かしてを言う」から始めて、できるようになったら、「今日はありがとうって言ってみようか」と、徐々にステップアップしていくのがコツです。また、一度にいくつもの約束をしても、子供は覚えられません。わかりやすく1つか2つに絞りましょう。

大暴れされて、二度と行きたくないほど辛くても、3度、5度と通ううちに場所や雰囲気に慣れて落ち着いていくこともあります。初めての場所が苦手、という特性をもつ子は多いです。始めはまったく伝わらなくても、「取ってはいけない」「たたいてはいけない」と何度もくり返し教えることで、子供の記憶に残っていきます。

疲れてくると手が出やすいので、子供の機嫌がよく他の子も少ない時間帯を選び、集中が続く短時間で切り上げ、少しずつ平和に遊べる時間を増やしていきましょう。室内でイライラしてきたなと感じたら、外に誘うなど、場所を変えれば気持ちが落ち着くこともあります。そういった適切な周囲のサポートで、幼児期の他害はかなり防げます。


「友達がほしいな」と児童館や公園に連れて行ったのに、あきらかに自分の子が攻撃的で周囲から浮いてしまったら、へこみますよね。そういう時は、無理して集団に入らなくていいと思います。

うちはその頃、児童館や支援センターの「発達がゆっくりな子向け」の集まりによく行っていました。保育士さんなど、支援の方が多めにいてくださったので、産まれたばかりの三男のオムツ替えや授乳にちょっと抜ける時にも、はちゃめちゃなミッキーを見ていただけて、本当に助かりました。

療育まで行かなくても、「発達がゆっくりな」と銘打ってある場所であれば、一般的な子供の遊び場よりも子供の数が少なめで、おもちゃも危ないものは出さない、保育士さんの見守りがある、多少気がかりな様子があっても大目に見てもらえるなど、親子で安心して通えます。最近は、そういった場所が増えてきているので、ぜひお近くでないか探してみてください。

そういった場所がなくても、無理に集団に入れて他の子に手を出されるよりは、誰もいない公園で遊ぶほうが、どれだけ心が平穏でいられるかと思います。あそこはこの子に合わないんだと割り切って、嫌な場所には行かなければいいと思います。もしかしたら、部屋の壁紙の色が怖かったとか、天井が低くて音が反響して嫌だったとか、親も気づかないようなことで、泣いているのかもしれません。

無理せず、子供が慣れていくのを待ってあげればいいと思います。意外と、数年後には「なんだったんだろう」と思うほど、落ち着いていたりもします。親が追い詰められれば、子供も追い詰めてしまいます。親子で楽に過ごせる方法を、探してください。