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子どもの言葉が遅れる原因については、いくつかあります。
最近では発達障害という言葉が一般的になってきたこともあり、「言葉が遅い=自閉症」と真っ青になる親御さんも多いかと思いますが、それ以外の問題がないか、聴力や口の機能などを確認する必要があります。

子どもの言葉が遅れる原因には、大きく分けて下の5つがあります。

①発達障害

自閉症スペクトラムやADHD(注意欠陥障害)、LD(学習障害)など、いろいろな発達障害がありますが、重複していることも多く、特性も一人一人異なった出方をします。

人に関心が薄くこだわりの強い自閉症スペクトラムでは、人の声そのものに興味が持てず、また聞こえ方や物の認知の仕方が異なっているため、言葉の習得が困難、または独特の話し方になる場合が多いです。注意を持続することが難しいADHDは、人の話を集中して聞くことが苦手で、また衝動性から言葉よりも手が出てしまうなどの問題を抱えがちです。LDでは、文字や音を言葉に結び付けて覚えることが困難で、会話や音読が著しくできない場合があります。

どの発達障害の特性でも、言葉が遅れる可能性があり、生まれ持った脳の機能的な問題なので、そのうち自然に話せるようになるだろうと放置せず、その特性に合った療育や言語指導を取り入れる必要があります。適切な対応を心がければ、ソーシャルスキルとして、言葉や人との関りを教えることができます。

②難聴

先天性の難聴と、後天性の難聴があります。

先天性とは、生まれつき耳の聞こえの悪い難聴で、早期に補聴器などで補わなければ、言葉の習得は難しいです。後天性の難聴は、中耳炎などの耳の病気からなります。とくに幼児で多いのが、発熱や痛みを伴わない滲出性中耳炎で、難聴の程度も軽いので気づかれにくく、発音がおかしいと調べてみたら滲出性中耳炎だったというケースも多いようです。(「滲出性中耳炎ってなに?」)
またおたふくかぜにかかると、「ムンプス難聴」という後遺症が残ることもあります。

片耳だけの難聴、高い音や低い音など特定の音域だけ聞こえていない難聴、普段の会話には困らない軽度難聴などは気づかれにくく、学校の健診などでもスルーしてしまうこともあるので、遠くから呼ぶと気づかない、どこか発音がおかしいなど、普段の生活で気になることがあれば、きちんと聴力検査を受けたほうがいいと思います。

4歳頃には、ヘッドホンで音を聞いてボタンを押す聴力検査ができると言われていますが、子供はムラッ気なもの。その気にならないとやりません。遊びながらできる遊戯聴力検査ができる施設や、眠らせて脳波を測るABRやASSR検査ができる大きな病院がおすすめです。うちもこの間、聴力検査をやってきました。→(「難聴かもしれない??言葉の遅れがある子は絶対に確認するべきこと」)

③口蓋裂などの口周りの疾患

生まれつき、唇や口蓋に割れ目がある口唇裂や口蓋裂が有名ですが、それ以外にも舌小帯が短い、または長いなどの口周りの機能的な問題で、発声が難しいケースもあります。口唇裂や口蓋裂は見た目でわかるので、新生児または幼少時に手術することがほとんどですが、何度も手術を重ねる必要があったり、その都度口の動かし方を練習しなければ、正しい発音や発声が学べません。

うちの次男ミッキーは、ベロが長くて鼻につくんですが、これも滑舌が異常に悪い原因かもしれません。舌の筋肉が未発達だと、ベロがだらっと垂れ下がったり、話す時に口の中に広がって上手に喋れないようです。寝る時は口呼吸だし。うーん、一度、形成外科に診てもらうか。

④アデノイド、扁桃腺などの鼻周りの疾患

口を大きくあーんと開けるとベロの横に見えるのが扁桃腺、その奥の鼻の突き当りにあるのが、アデノイドです。どちらもリンパ腺で、鼻や口からばい菌や細菌が、身体の中に入るのを防ぐ役割があります。免疫力や抵抗力を司る器官で、4~8歳頃にもっとも大きくなり、大人になると小さくなります。この扁桃腺やアデノイドが発達しすぎて、鼻や喉の動きを邪魔する大きさになると、発声や発音に影響が出ることがあります。

また扁桃腺やアデノイドが炎症を起こすと、鼻汁がたまって、滲出性中耳炎や中耳炎を起こすことも。難聴の原因にもなります。とはいえ大切な器官なので、大きさすぎて食事や呼吸に影響が出る、あまりにしょっちゅう炎症を起こすなどのひどい場合を除いては、手術をすることはありません。

⑤心理的な問題

下の子が生まれた、幼稚園や保育園に入った、などの大きな環境の変化から、一時的に言葉がストップしてしまうこともあります。赤ちゃん返りや、緘黙(かんもく)と呼ばれる症状です。普通の子供はしばらく様子を見ていると、環境に慣れていくにつれ、また話し始めるようになります。慣れない人や場所では喋らないことは、警戒心の強い子供にはよくあるので、お母さんができるだけニコニコしながら「大丈夫よ」と言ってあげることが大切です。「ちゃんとごあいさつして!」などと急かすと、逆効果になりがち。

ただ、次男ミッキーもそうだったのですが、下の子が生まれた時から半年以上言葉がストップしてしまいました。これは自閉症スペクトラムの子供によくあるようで、掲示板などを読んでいても、「入院してから、喋らなくなった」「下の子が生まれて、喋らなくなった」「引っ越したら、言葉が消えた」などなど、同じような経過をたどる子供が多いです。普通の子供はすんなりと順応することができるような変化に、過剰に反応して、決定的な傷が残ってしまうようです。普通は辛いことがあっても、泣いて甘えて抱っこしてもらって癒されるものですが、自閉症スペクトラムの子供は、自分の中だけで抱え込んで、言葉や表情が消えてしまいがちです。
本来言葉が出始める2、3歳頃に、そのような反応があったら、発達障害を疑ってみる必要があるかもしれません。


いかがでしたでしょうか。ひとえに言葉の遅れといっても、原因はいろいろ考えられます。たんに発達がゆっくりな子、遅咲きな子もいるので、というかほとんどがそっちなので、健診などでもあまり心配しすぎないように言われてしまいますが、日々育てている親の違和感、これに勝る診断はありません。
「なにか違う」。そう感じたら、恐れずに発達センターや病院を受診してみてください。大きな病気や生まれつきの疾患を見つける、きっかけになるかもしれません。

難しいのは、聞こえ&鼻系→耳鼻科。口系→歯科 or 形成外科。発達障害→発達外来や児童精神科など。と、科が違うんですね。どこに行けばいいのかわからない!!となる場合は、とりあえず大きめの病院(いくつも科がある)の小児科や耳鼻科などで、相談してみるといいです。家庭センターや健診の場で相談すると、おすすめの病院を紹介してもらえることも。原因がはっきりすれば、対策も立てられます。見通しが立てば、親も子供も、安心して生活することができます!